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27 april 2009
古いものから新しいものへ
キッチンの流し前は出窓になっている。洗って伏せたガラスを朝の光が突き抜ける。よね屋敷は全体がものすごくおんぼろなんだが、局所的にはとても好きな風景もある。
先週から、お客さんのホームページのログを新しいサイトの上に引っ越しさせる作業をし続けている。古いサイトから文字をコピーして、新しいテンプレートの上に貼り付け、画像ファイルの名前を変更して新しい書類を作り、新サイトにアップロードするという単純作業。2日ぐらいで終わるだろうと甘く見くびっていた。かなりの量があり、もう3日目に突入。
村上春樹の「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」だったっけかな?影のない国に迷い込んだ主人公が図書館に行くシーン。ときどき関係のないときに、その物語のそのシーンだけが思い浮かんでくることがあった。
その図書館で本はなぜか本でなく一角獣の頭骨で、書架には骨がずらーっと並んでいる。カウンターには視覚のない少女が1人座っていて、手でどくろをなでまわして本の内容を読み取っている。目の見えない少女がただ本を読み取り続けるという永遠に終わらない作業のシーンが心から離れなかった。
サイトの引っ越しを決行して、「気になっていたムラカミハルキのあの図書館シーン、なんだか知っている気がしたことの意味は、そうか!これだったのか!」と思った。
骨ではないけど、本の形でない書類をブラウザで開き、目ではなくマウスでなでまわして指で操作して読み取る。べつの書類に書き写す。これって、世界の終わりの国の永遠に終わらない仕事とそっくりの作業だ。
村上春樹はべつにそういうつもりであの小説を書いたのではないかもしれないけど、なんかみごとに、21世紀の図書館的労作を暗示していると思う。
コピーしながら、それから作業結果を確認しながら、5年前のログを読み返すこととなる。いかんいかん。気がつくと完全に読みふけって手が止まっているぞ。
投稿者 midori : 10:52 am | コメント (0)
15 april 2009
セガフレードのビール断ち
エスプレッソがうまい渋谷のカフェ。ここでいつの日か、ビールを注文するのが夢でした!
毎週土曜日の仕事場の隣にセガフレードというカフェがある。仕事に入る前や休憩にほぼ毎週コーヒーを買う。告白すると、いつも思っていることがあった。
「うへー。ビール飲みてぇ。」
このカフェは1階がオープンエアになっていて、ビールやワインも出す。土曜の午後の「白昼堂々ビール率」がとても高い。渋谷の109の近くだから観光客や外人も多いのだが、日本人だって土曜日といえばたいていお休みで、この界隈は、お祭りみたいな賑わいなのだ。そして人々は楽しそうに、うれしそうに昼間でもビールを頼む。
むろん、よねは仕事中だ。ビールなんか頼まない。そればかりか小さな誓いまで立てている。
「今、走っているクラスの最後の実技の授業が終了するまで、セガフレードではビールを頼みません。」
授業が進行している間は、放課後も授業でない日も、である。渋谷のセガフレード限定禁酒である。最後の授業まで、デザインの勉強を諦める生徒さんが出ませんように、という、よねなりのささやかな願かけだった。
ビジネススクールの1クールは半年。よね自身、サラリーマンだったころ、昼間仕事をしながら生徒だったこともあるのですごくよくわかるのだが、とても長くて短い、濃い半年。このスクールのカリキュラムはかなり難易度が高い。生活すべてを「ガッコウ中心」に据えなくては勉強についていけない。
視覚系のソフトのスキルを身につけるにはなるべくたくさん手を動かして、体に覚え込ませるしかない。理解できなかった部分を繰り返し繰り返し復習する。スポーツみたいだが、練習あるのみなのだ。
カリキュラムの後半では実際の仕事での注文と同じような課題が与えられる。人が要望していることを具体的な形に変えるトレーニングも詰む。これはプログラミングの技術のように「動く」「動かない」という、きっぱりした答えがあるものではないので、技術を覚えるよりもっと砦が高い。なんども失敗してやり直しして、自分で正解を経験して見つけるにはかなりの根気がいる。どんなにがんばっても答えがみつからないまま一週間が終わったり、何時間もかけた作品がやり直しになったりするのは切ない。「明日の生活をとるか、夢を優先させるのか?それより、その夢ってそもそも何なのか?」という悩みにもぶち当たる(※1)。デザインで食べていくのは他の仕事よりずっとたいへんだということに気がつく。
※1:でもこれは、よく考えると、一人前のデザイナーがいつも考え続けなくてはならないテーマの1つでもある。「森を見るか?今はまだ木を見るか?どこを見つめるか?」まだ学生でいながら、すでにクリエーションの本論にぶち当たっているということに、生徒さんは気がついていないと思うが。
こんなふうに、とんでもないハードなクラスなので、何人の生徒さんが最後まであきらめないで出席してくるか?が、仕事中のいちばんの心配であった。毎回、授業開始前にマシンを準備しながら、よねは祈るような気持ちで生徒さんが来るのを待っていた。
先日、この学校でのよねの最後の授業が終了した。アシスタント先生の優秀なフォローと担任スタッフさんの心温まる見守り、それともちろん、生徒さんのがんばり、あとよねの「セガフレードビール断ち」のかい(?)あって、生徒さんたちは見事ゴールまでたどり着いた。それでラスト授業終了お祝いと卒業制作の打ち込みの飲み会。お好み焼きの一次会のあと、学校の場所まで戻った。隣のカフェに席を取り、夢にみていたセガフレードのビールだ!かんぱーい!
投稿者 midori : 10:03 am | コメント (0)
12 april 2009
海辺の温泉のまち旅歩き2/路線バスでさくら巡り
海あそびは楽しい。人が作った物が壊れて自然に帰る経過。二つとない、きれいな色と形と質感を集めてながめて触って、また海に返した。
チェックアウトを終え、ホテルを出てから列車の時刻までの2時間半をどう過ごすかが、この旅いちばんの急所となります。独り旅であれば、古い街の建物や看板を見てぶらつくのみでじゅうぶんなのですが、親たちの世代は納得しません。
<70代おばあちゃんが満足する旅のスポット 3条件>
1. 「名所」あるいは「旧跡」と読みやすい看板がかかり、建物はパンフレットで見たものと同じであること(観光バス専用の駐車所、大きなトイレなど、団体向けの施設があればなお、気分が盛り上がる)。
2. まんじゅうなどの試食か地域限定のソフトクリームなど、ご当地の食をその場食いできるコーナーがあること。
3. お土産売り場(売り子は地元のおばちゃんで、ふれあいが持てればなおよい)。
どんなに自然が美しくても、すばらしい遺物を目にしても、70代向けの観光としては失格です(国内海外問わず)。上記3箇条が満たされていない場所では「疲れた」「早く帰りたい」の連発になり、「二度といきたくない」などの酷評をくらうのが通例です。
車のない観光客の選択肢は、街のどこかで食事をするか、同じ街の山の頂上にある遊園地にいくか、みかんワイナリーを見学するかのいずれしかないようです。かなり難易度の高い選択でしたが、いけてないパンフレットの「試飲コーナー」の文字につられて、えいやあっと、みかんワイナリーの見学を選びました。
ホテルのバスで駅まで行って、荷物をロッカーに預けます。1時間に1本しかないバスの終点に遊園地はあり、みかんワイナリーは途中の山の中腹で降ります。リュックを背負った地元のおばさんたちの一団と一緒に路線バス乗り場に並びました。
山に登るくねくね道のところどころで海と海辺の街を見渡せます。バスはセカンドギアでゆっくりゆっくり進みます。あちこちで木々が明るく花の咲かせており、思いもかけないドライブとなりました。街を一望できるちょっと開けた場所に大盛りの満開の桜の広場がありました。地元の県立高校のグラウンドです。「いいなあ。こんな景色のいい高校入学したいよ。」とよねが言うのをバスの前の座席の地元のおばちゃんが聞いてて、「こんのがっこうは景色ばあっか見てるだで、頭のほうはさっぱりなんだよなあ」と口出ししてきました。
「みかんワイナリー」という停留所でバスを降りたのはよねたちだけ。みかんワイナリーと書かれた立派な看板も、団体客用のバス発着場も、きれいで大きなトイレもありますが、お客はわれわれの他にはだれもおらず、工場かな?とおぼしき建物に「ご自由に見学してください」という看板がかかっています。
建物の中は薄暗く静まりかえっています。廊下にはたしかに、見学用の「みかんワインができるまで」というパネルはかかっており、パネルの写真のような醸造タンクやみかん選別場らしい場所はあるのですが、機械は止まっています。1人も仕事していません。見学ルートはあっという間に終わって外に出てしまいました。敷地には、広くて大きなビニールハウスはあるものの、中は空っぽの陳列台と植木鉢とテーブルが並んでいるだけです。
「なあんだ、これだけー」と母が言い、よねは一瞬「しまったー。あのおばさん達と頂上の遊園地まで行けばよかったかなー」と後悔しました。ところがこの後、一発逆転が起こったのでした!
事務所には人がいて、よねたちの動きをみはからっていたのだと思われます。さっきは誰もいなかった売店にエプロンをした女の人が待ち構えていて、よねたちを招き入れました。手際よくワイングラスを7つテーブルに並べ、冷蔵庫から冷えたワインを取り出すと、ひとつひとつのグラスに1銘柄ずつ7種類の飲み物をつぎつぎ注ぎました。
品揃えは、1. 季節限定桜ワイン、2. 甘口みかんワイン、3. 甘くないみかんワイン、4. みかんのリキュール、5. アロエ液を甘いワインで割ったもの、6. アロエ液原液、7. アルコールなしのみかんジュース、の7種類です。他にお客がいないので、時間をかけてこれらの品の説明を聞きました。みんなでグラスをまわして飲み比べて、母がじっくり組み合わせを迷っている間によねはおかわりまでいただきました。
景色はいいけど工場も動いておらず、商魂もたくましく、かなり「やられた」感のある観光ポイントでしたが、今回はこちらを選んでみごと正解だったのです。一瞬ひやりとしましたが、70代旅の査定条件「看板」「その場食い」「お土産」を3部門ともみごとクリアーしているのでノープレブレム。一行は気持ち良くほろ酔いでワイン工場を後にしたのでした。
先ほどバスで登ってきた道を駅まで、今度は徒歩で下ることにしました。小1時間歩いて街に着くころ、ちょうど列車の時刻になる予定です。だらだらの下り坂は膝に厳しいので、きつそうだったら途中でタクシーを呼ぼうと思ってたのだけれど、両親とも楽勝で歩いていました。眺めのいい高校で小休止。桜にすっぽりつつまれた校庭にこっそりお邪魔しました。ポットにつめてきたお茶でのどを潤します。たわわに桜が咲いてる下で風が吹くと、桜吹雪もすばらしい!(伊豆旅行終わり)
投稿者 midori : 05:34 am | コメント (0)
10 april 2009
海辺の温泉のまち旅歩き1
桜があまりにきれいで、思わず不法侵入しちゃった県立高校。ブログタイトルどおりのカテゴリーの「旅はいいなあ。」を、やあーっとお届けできますです。
はい。よねです。春休みの旅をしてきました。行き先は伊豆。旅の仲間はよねの家族です。
家族でどこかに出かけて、意見が食い違い、現地解散になったことは数しれません。よねの家族はよねに輪をかけてきまぐれ&思いついたら我慢できない派です。ですが、今回は母が申し込んだ行き帰りの鉄道込みのパック旅行です。はぐれとけんか別れは避けなくてなりません。どこへでもパソコンしょっていくよねですが、久しぶりの家族旅行のサービスに集中するため、マシンとバッテリーは家に置いて旅立ちました。
10時に家を出て、東京駅のグランスタで弁当と酒をゆっくり選び、12時過ぎの踊り子に乗り込みました。伊豆急の稲取まで2時間半の道のりです。今年は偶然、桜の開花時期が4月にずれこみ、千葉〜品川〜横浜〜伊豆と道のりがずっと満開の桜で色づいていてきれいでした。
稲取駅ではマイクロバスが迎えに着ており、ホテルに到着するとほぼ3時でした。宿は海の際ぎりぎりのところに建っており、お風呂からも部屋からも海が見渡せます。パソコンを切ったおかげで、ばっちり、なーんにもしない隙間の時間が味わえました。温泉2時間とアロママッサージと海のごちそう+ビールジョッキ複数杯でこの上なくありがたく出来上がり、8時過ぎには眠くなりました。「もう一回お風呂行く」といったままそのまま気を失ったそうです。
翌朝は4時半に気がついて、風呂場に直行。温泉から、海がだんだん明るくなっていくのを楽しみました。
朝ご飯までにまだ2時間近くありましたが、パソコンもないので散歩するしかないでしょう。独りでホテルを抜け出しました。早朝です。陸ではだれにも会いませんでしたが、海上には釣りの船が何艘か出ていました。ホテルの前の海岸は岩場です。1人のときにうっかり転んで動けなくなったりするとおおごとなので、おとなしく防波堤をの上をずっと歩くだけにしました。
船を引き上げるために波を切っているところが一カ所あって、少しの幅の砂浜を見つけました。波打ち際まで降りられます。打ち寄せられたガラスのかけらやへんな形の石ころを探して遊びました。
そんなに寒くも暑くもなく、ちょうどいい気温だったので、靴を脱いで少し体操をしました。周りに誰もいないのを確かめて「たびはいいなあぁ〜」と海に吠えてみました。(つづく)