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海辺の温泉のまち旅歩き2/路線バスでさくら巡り

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海あそびは楽しい。人が作った物が壊れて自然に帰る経過。二つとない、きれいな色と形と質感を集めてながめて触って、また海に返した。
 チェックアウトを終え、ホテルを出てから列車の時刻までの2時間半をどう過ごすかが、この旅いちばんの急所となります。独り旅であれば、古い街の建物や看板を見てぶらつくのみでじゅうぶんなのですが、親たちの世代は納得しません。

<70代おばあちゃんが満足する旅のスポット 3条件>
1. 「名所」あるいは「旧跡」と読みやすい看板がかかり、建物はパンフレットで見たものと同じであること(観光バス専用の駐車所、大きなトイレなど、団体向けの施設があればなお、気分が盛り上がる)。
2. まんじゅうなどの試食か地域限定のソフトクリームなど、ご当地の食をその場食いできるコーナーがあること。
3. お土産売り場(売り子は地元のおばちゃんで、ふれあいが持てればなおよい)。

 どんなに自然が美しくても、すばらしい遺物を目にしても、70代向けの観光としては失格です(国内海外問わず)。上記3箇条が満たされていない場所では「疲れた」「早く帰りたい」の連発になり、「二度といきたくない」などの酷評をくらうのが通例です。
 車のない観光客の選択肢は、街のどこかで食事をするか、同じ街の山の頂上にある遊園地にいくか、みかんワイナリーを見学するかのいずれしかないようです。かなり難易度の高い選択でしたが、いけてないパンフレットの「試飲コーナー」の文字につられて、えいやあっと、みかんワイナリーの見学を選びました。
 ホテルのバスで駅まで行って、荷物をロッカーに預けます。1時間に1本しかないバスの終点に遊園地はあり、みかんワイナリーは途中の山の中腹で降ります。リュックを背負った地元のおばさんたちの一団と一緒に路線バス乗り場に並びました。

 山に登るくねくね道のところどころで海と海辺の街を見渡せます。バスはセカンドギアでゆっくりゆっくり進みます。あちこちで木々が明るく花の咲かせており、思いもかけないドライブとなりました。街を一望できるちょっと開けた場所に大盛りの満開の桜の広場がありました。地元の県立高校のグラウンドです。「いいなあ。こんな景色のいい高校入学したいよ。」とよねが言うのをバスの前の座席の地元のおばちゃんが聞いてて、「こんのがっこうは景色ばあっか見てるだで、頭のほうはさっぱりなんだよなあ」と口出ししてきました。
 「みかんワイナリー」という停留所でバスを降りたのはよねたちだけ。みかんワイナリーと書かれた立派な看板も、団体客用のバス発着場も、きれいで大きなトイレもありますが、お客はわれわれの他にはだれもおらず、工場かな?とおぼしき建物に「ご自由に見学してください」という看板がかかっています。
 建物の中は薄暗く静まりかえっています。廊下にはたしかに、見学用の「みかんワインができるまで」というパネルはかかっており、パネルの写真のような醸造タンクやみかん選別場らしい場所はあるのですが、機械は止まっています。1人も仕事していません。見学ルートはあっという間に終わって外に出てしまいました。敷地には、広くて大きなビニールハウスはあるものの、中は空っぽの陳列台と植木鉢とテーブルが並んでいるだけです。
 「なあんだ、これだけー」と母が言い、よねは一瞬「しまったー。あのおばさん達と頂上の遊園地まで行けばよかったかなー」と後悔しました。ところがこの後、一発逆転が起こったのでした!
 事務所には人がいて、よねたちの動きをみはからっていたのだと思われます。さっきは誰もいなかった売店にエプロンをした女の人が待ち構えていて、よねたちを招き入れました。手際よくワイングラスを7つテーブルに並べ、冷蔵庫から冷えたワインを取り出すと、ひとつひとつのグラスに1銘柄ずつ7種類の飲み物をつぎつぎ注ぎました。
 品揃えは、1. 季節限定桜ワイン、2. 甘口みかんワイン、3. 甘くないみかんワイン、4. みかんのリキュール、5. アロエ液を甘いワインで割ったもの、6. アロエ液原液、7. アルコールなしのみかんジュース、の7種類です。他にお客がいないので、時間をかけてこれらの品の説明を聞きました。みんなでグラスをまわして飲み比べて、母がじっくり組み合わせを迷っている間によねはおかわりまでいただきました。
 景色はいいけど工場も動いておらず、商魂もたくましく、かなり「やられた」感のある観光ポイントでしたが、今回はこちらを選んでみごと正解だったのです。一瞬ひやりとしましたが、70代旅の査定条件「看板」「その場食い」「お土産」を3部門ともみごとクリアーしているのでノープレブレム。一行は気持ち良くほろ酔いでワイン工場を後にしたのでした。
 先ほどバスで登ってきた道を駅まで、今度は徒歩で下ることにしました。小1時間歩いて街に着くころ、ちょうど列車の時刻になる予定です。だらだらの下り坂は膝に厳しいので、きつそうだったら途中でタクシーを呼ぼうと思ってたのだけれど、両親とも楽勝で歩いていました。眺めのいい高校で小休止。桜にすっぽりつつまれた校庭にこっそりお邪魔しました。ポットにつめてきたお茶でのどを潤します。たわわに桜が咲いてる下で風が吹くと、桜吹雪もすばらしい!(伊豆旅行終わり)