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古いものから新しいものへ
キッチンの流し前は出窓になっている。洗って伏せたガラスを朝の光が突き抜ける。よね屋敷は全体がものすごくおんぼろなんだが、局所的にはとても好きな風景もある。
先週から、お客さんのホームページのログを新しいサイトの上に引っ越しさせる作業をし続けている。古いサイトから文字をコピーして、新しいテンプレートの上に貼り付け、画像ファイルの名前を変更して新しい書類を作り、新サイトにアップロードするという単純作業。2日ぐらいで終わるだろうと甘く見くびっていた。かなりの量があり、もう3日目に突入。
村上春樹の「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」だったっけかな?影のない国に迷い込んだ主人公が図書館に行くシーン。ときどき関係のないときに、その物語のそのシーンだけが思い浮かんでくることがあった。
その図書館で本はなぜか本でなく一角獣の頭骨で、書架には骨がずらーっと並んでいる。カウンターには視覚のない少女が1人座っていて、手でどくろをなでまわして本の内容を読み取っている。目の見えない少女がただ本を読み取り続けるという永遠に終わらない作業のシーンが心から離れなかった。
サイトの引っ越しを決行して、「気になっていたムラカミハルキのあの図書館シーン、なんだか知っている気がしたことの意味は、そうか!これだったのか!」と思った。
骨ではないけど、本の形でない書類をブラウザで開き、目ではなくマウスでなでまわして指で操作して読み取る。べつの書類に書き写す。これって、世界の終わりの国の永遠に終わらない仕事とそっくりの作業だ。
村上春樹はべつにそういうつもりであの小説を書いたのではないかもしれないけど、なんかみごとに、21世紀の図書館的労作を暗示していると思う。
コピーしながら、それから作業結果を確認しながら、5年前のログを読み返すこととなる。いかんいかん。気がつくと完全に読みふけって手が止まっているぞ。