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セガフレードのビール断ち
エスプレッソがうまい渋谷のカフェ。ここでいつの日か、ビールを注文するのが夢でした!
毎週土曜日の仕事場の隣にセガフレードというカフェがある。仕事に入る前や休憩にほぼ毎週コーヒーを買う。告白すると、いつも思っていることがあった。
「うへー。ビール飲みてぇ。」
このカフェは1階がオープンエアになっていて、ビールやワインも出す。土曜の午後の「白昼堂々ビール率」がとても高い。渋谷の109の近くだから観光客や外人も多いのだが、日本人だって土曜日といえばたいていお休みで、この界隈は、お祭りみたいな賑わいなのだ。そして人々は楽しそうに、うれしそうに昼間でもビールを頼む。
むろん、よねは仕事中だ。ビールなんか頼まない。そればかりか小さな誓いまで立てている。
「今、走っているクラスの最後の実技の授業が終了するまで、セガフレードではビールを頼みません。」
授業が進行している間は、放課後も授業でない日も、である。渋谷のセガフレード限定禁酒である。最後の授業まで、デザインの勉強を諦める生徒さんが出ませんように、という、よねなりのささやかな願かけだった。
ビジネススクールの1クールは半年。よね自身、サラリーマンだったころ、昼間仕事をしながら生徒だったこともあるのですごくよくわかるのだが、とても長くて短い、濃い半年。このスクールのカリキュラムはかなり難易度が高い。生活すべてを「ガッコウ中心」に据えなくては勉強についていけない。
視覚系のソフトのスキルを身につけるにはなるべくたくさん手を動かして、体に覚え込ませるしかない。理解できなかった部分を繰り返し繰り返し復習する。スポーツみたいだが、練習あるのみなのだ。
カリキュラムの後半では実際の仕事での注文と同じような課題が与えられる。人が要望していることを具体的な形に変えるトレーニングも詰む。これはプログラミングの技術のように「動く」「動かない」という、きっぱりした答えがあるものではないので、技術を覚えるよりもっと砦が高い。なんども失敗してやり直しして、自分で正解を経験して見つけるにはかなりの根気がいる。どんなにがんばっても答えがみつからないまま一週間が終わったり、何時間もかけた作品がやり直しになったりするのは切ない。「明日の生活をとるか、夢を優先させるのか?それより、その夢ってそもそも何なのか?」という悩みにもぶち当たる(※1)。デザインで食べていくのは他の仕事よりずっとたいへんだということに気がつく。
※1:でもこれは、よく考えると、一人前のデザイナーがいつも考え続けなくてはならないテーマの1つでもある。「森を見るか?今はまだ木を見るか?どこを見つめるか?」まだ学生でいながら、すでにクリエーションの本論にぶち当たっているということに、生徒さんは気がついていないと思うが。
こんなふうに、とんでもないハードなクラスなので、何人の生徒さんが最後まであきらめないで出席してくるか?が、仕事中のいちばんの心配であった。毎回、授業開始前にマシンを準備しながら、よねは祈るような気持ちで生徒さんが来るのを待っていた。
先日、この学校でのよねの最後の授業が終了した。アシスタント先生の優秀なフォローと担任スタッフさんの心温まる見守り、それともちろん、生徒さんのがんばり、あとよねの「セガフレードビール断ち」のかい(?)あって、生徒さんたちは見事ゴールまでたどり着いた。それでラスト授業終了お祝いと卒業制作の打ち込みの飲み会。お好み焼きの一次会のあと、学校の場所まで戻った。隣のカフェに席を取り、夢にみていたセガフレードのビールだ!かんぱーい!