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17 oktober 2007
年賀状のデザイン
やる気がでないときは仕事も勉強もしない。体力をつけにジムに行く。たっぷり筋肉を動かすと翌日はみごとに筋肉痛。足や腕が痛んで歩くのがたいへんになると、心の痛みはどうでもよくなり、仕事をするしかなくなる。やってごらん。
よねは、他社様からのご依頼以外の、自分の年賀状は「手作り」「手書き」にこだわっています。コンビニとかでも、すてきなイラストの年賀状が売ってますし、パソコンに住所を一度入力すれば、宛名の印刷もあっという間にできる昨今、時代に逆行しています。ほんとばかみたいなのですが。人さまからいただく年賀状は、パソコンの出力であっても、ちっとも嫌だと思わないのですが、自分が出す分は、手書きの住所でなくては、なんだかだめな気がするのです。過去に、長い間、正月用にすごい大量のダイレクトメールをデザインして、それを年賀状と同時に送りつける、という仕事を担当していた時代があるので、宣伝物と自分のものとは一線を引きたいという気持ちが、いまだにどこかに染み付いているのかもしれない。
絵柄面やこちらの住所はさすがに印刷しますが、必ず手づくりの風合いを持たせるための工夫をしています。ここのところ20年くらい、シルクスクリーンにすることが多いです。もともとプリントゴッコという、家庭用の印刷機を愛用していたのですが、プリントゴッゴのインクだと、濃くがでないのが気に入らなくなって、シルクスクリーン用のインクとスキージ(インクを広げるゴムのへら)で刷ってみたのが、始まり。
毎年、自分で版を焼いて、自分でインクを練って、一枚一枚、一色一色、手刷りで色を入れてきました。3年くらい前から、銀座の伊東屋さんは、シルクのインクや溶剤を置くのを止めました。材料が手に入らなくなり、自宅で刷ることができなくなりました。今は知り合いのシルク工房さんのお世話になっています。
制作には下絵制作も含めると、けっこうな時間がかかります。忙しいときは、たいへんよい心の栄養タイム。あまのじゃくなよねは、忙しいときほど、反対のことをするとなんかすっきりして、楽しくなる、という、ばかな感覚の持ち主。しかし、あと何年、こんなスタイルを続けられるのでしょう。
今年もシルクスクリーン工房さんのスケジュールを確認したので、本日は版の下絵をデザインしました。来年の干支はねずみです。チュウ。
投稿者 midori : 04:16 pm | コメント (0)
10 oktober 2007
福原信三と資生堂展
みうらじゅんの「かってに観光協会(K.K.K)」の宣伝部版。よねたちのサークル”ものつくりクラブ”の「かってに広告協会(K.K.K)」。としまえんのエルドラド編のイベント「エルドラド生誕100年ビアフェスタ」終わりました。
10月の連休の最終日は朝から雨。風も強い。出かけるのには勇気がいって、ぐずぐずしているうちに、東京方面への快速電車ぎりぎりの時間になる。砧公園周辺を歩くことになった場合を想定して、ブレーカーとレインシューズの完全防備で家を出た。用賀に着くころ、雨は上っていた。世田谷美術館の福原信三と資生堂展(11月4日まで)を見る。福原信三の写真もよかったが、イラストレーター山名文夫の原画に圧倒される。
パソコンの線じゃない、人の手の圧力のかかった線。顔をうんと近づけてみると、カーブのいちばん緊張の部分はゆらゆらしていたり、ふつうに考える軌道よりちょっぴり膨らみが大きかったり。生き物みたいだった。パッケージも印刷もこの時代は、デザイナーが書いた下絵をそれぞれの行程の職人がその仕事の道用にトレースして加工した。できあがった製品は、いろんな手を経た、仕事の結晶なんだよなあ。携わった人たちの気持ちが伝わる。
資生堂の人でない美術家の目で選んで並べられると、商品もカタログや店頭で見るのとは全く違う生きものに見える。展示されていたのと同じ製品やパッケージ、使い終わるとぽいぽい捨てていたが、作られた器や道具って時を語る「美」なんだなあと感じる。
山名文夫の成城のアトリエが会場内に再現されていて、それもとてもよかった。山名文夫が愛した家具は当たり前なんだが、スーパーデザイナーの設計した昆虫みたいなパーツのブランド品なんかじゃない。たくさんの曲線がその上で誕生した机は、まっすぐで質素な木製家具なのであった。
世田谷美術館のあと、としまえんのエルドラド生誕100年記念イベントの最終日に。アコーディオンの音色を聞きながら、ビールを乾杯。閉園時間までいた。夢中で遊んだ行事がハピーエンド。夏が終わった。
次の目標はエルドラドの生みの親、ヒューゴ・ハーゼについて調べること。何かに首をつっこむと、つぎにするべきことがわかってくる。予定を立ててない旅をしているみたいな感じ。
投稿者 midori : 09:35 am | コメント (0)
06 oktober 2007
卒業制作
レトロにしようなんて思ってないのに30年前な感じで、メニューに「トースト」「ポテトサラダ」「おでん」「目玉焼き」とか、不思議な取り合わせがふつーに並んでる、カウンターだけのリトルショップ。この手の店があると、どうもふらふらと入ってしまう。
今年初めてのキンモクセイの香りをさっきチャッチ。どこかに出かけたいような天気でしたが、「お布団を干す」を選びました。それと夏のブラウスとかジャケットを全部洗濯しなおして片付け、冬の衣類と入れ替えました。こんなにたくさん持っていたのに、なんで毎週おんなじものしか着なかったのだろう。前の冬からデザインを教えていた生徒さんたちが、いよいよ卒業制作の時期を迎えてます。
毎週土曜日にデザインのノウハウを教えている、ビジネスマンが通う技術の学校。学びにこられる生徒さんはだいたい2派に分かれます。一方は学校に来る前から、なんらか表現の仕事の経験を持っている人のグループ。どんな分野であれ、もの作りの現場を見たことのある人は、デザインのこつをぐんぐん飲み込んで、学校をいい意味で利用して、次の足がかりをご自分で在学中から捕まえてらっしゃる。
もう一つのグループはものを作るトレーニングを中学や高校の美術の授業時以降したことがなかったが、絵を見たり描いたりするのは好きで、ずっとデザインの仕事に憧れて、というチーム。課題はいっしょでも、二つの派には、それぞれ違うところをとっていってもらうことになる。一つの授業をしているんだけど、初心者レベルの説明と仕事レベルの指示をいっぺんに出している感じ。
この学校のカリキュラムはとてもハードだ。自分が生徒だったら、おそらくこなせないだろうなと思うくらいたいへん。仕事しながら勉強して、普通じゃない量の宿題をこなすのだから、全課題をこなして卒業制作までたどりつける生徒さんは、どの方もほんとにあっぱれな精神力である。入学時にはパソコンの電源も入れられなかった人が、半年後には自分で企画を立て、会社に買ってもらえるレベルの作品を作り上げる。
教えているわたしがいうのもなんですが、いまだって仕事、怖いです。逃げたいと思うこと、しょっちゅうある。無事納品できるかなあ……。仕上がりが事故無しで無事に刷り上がるかどうか。考えるだけで心拍数が上がります。心の底では「転職より、嫁に行けよー。その方が楽だぞー」と、まじに思っています。「最初は楽しさを伝えなくてどうする」というご批判もなくはないが、楽な道ではないのは事実なので、尾根から一気に谷底に滑落したときの体験も痛みも話しています。それでも、行きたい人は、進む。がんばれ。