11-01/フォーマット
11-01/フォーマット
一冊の本として、リズム良く見てもらうために、全体にいきわたらせる「決まり」 を作ります。
例えば、「中身とページの空きをどのページも揃える」「繰り返し出てくる同じ部分には、同じフォントを使う」など、統一したほうが読みやすくなる部分は同じ指定をします。
空きやフォントの大きさなど、基本デザインのパターンを決めておいて、同じ基本設定を使い回しして(属性のコピー&ペースト)、いろいろなページのレイアウトをきめるとよいでしょう。
このような基本のひな型が「フォーマット」です。
11-02/見開きをデザインしていく
基本のフォーマットを決めたら、見開きページをデザインしてみましょう。
このページをもとに、ページのマージンやフォントのサイズ、グリッドのサイズを決め、必要な場所にガイドを引きます。
基本のフォーマットとして別名保存しておくといいでしょう。
基本フォーマットをアレンジしながら
・カバー
・扉
・まえがき
・目次
・本文つづき
・あとがき
・奥付 などのページに作り替えていきます。
11-03/グリッドデザインのメリット
①わかりやすい
情報を種類に応じて区分け、重要度順に並べまる。ユーザーが情報を探しやすくなります。
②効率が良い
書籍やシリーズ物のカタログなど、大量の情報を、手早くレイアウトできます。
またグリッドがあれば、多数の人々が同じプロジェクトに参加したり、関連のあるプロジェクトを時間差を設けてシリーズ化することができる。そんなわけで、本を編集する現場やWeb現場のデザインにはグリッドデザインが取り入れられています。
③秩序と一貫性がある
秩序情報を種類別に区分けしているので、ユーザーが情報を探しやすい、といういいところがあります。
11-04/グリッドデザイン|文字が最小単位
タイポグラフィーをするスペース(白い台紙)を前にしたら、まず、文字を1文字置いてみましょう。
文字は意味を中心に見ると単語の一部ですが、デザイン的にとらえると、タイポグラフィーの最小単位です。
タイポグラフィーをLEGOブロックに例えると、文字はいちばん小さなブロックの1ピースです。
単語をつないで1行の文にしてみましょう。1行の文はメッセージでもありますが、デザイン的にとらえると、1本の線です。
1本の線を画面に置いてみましょう。
目は、文字の列を追いますね。方向が生まれ、画面には、1本の線が分けた2つの区画が設定されます。
最小単位の文字は、たった一文字ですが、それ自体にも線の幅や面と空間の比率など、デザインのバランスを持っています。
読む人の目は、もちろん、文字のもつ意味、単語の持つ意味、文の持つ意味を読み取るのですが、その他にも、視覚的にいろいろな情報を得ています。
その文字に着せられたフォント(字体)の持つ個性もその一つでしょう。
また、文字と文字との間にできた空間と文字の面とのバランスは目に入る速度と関わります。
目に入るスピードを調整されて、人はその文字に込められたイメージを感じます。
文字と文字の間が広いとのんびりさやほっとしたイメージを受けたり、狭いと難しいと感じたり、緊張した空気を感じたり、という経験は皆さんにもあるでしょう。
このように、タイポグラフィーのイメージは、一つ一つのピースが持つ個性が持つ部分のイメージと、空間や周りエリアの醸し出す全体のメッセージの連続性で成立しています。
11-05/グリッドデザイン|線と空間
1本の線で見る人の視線に、方向と動きが生まれます。また、上の区画と下の区画、2つの区画が設定されます。それで「バランス」が生まれます。
1行がつぎつぎにつながって段落になります。
長い段落は高さを持ちますよね。
行頭がくっきりした垂直線を描き、行末があいまいな垂直線を形作っている、1つの形状(面)となります。
この形状の行頭の垂直線は、紙面を縦に分ける(横組の場合)基準線(目印)の役目を持ち始めます。
縦の線が紙面スペースを縦に分割すると同時に段落自体が1つの形として個性を持つ。この面のピースをコラムと呼んでいます。
行頭の垂直線が行末で崩され、次の行でまた垂直線が現れる。
コラム自体がその内部にリズムを持ちますし、コラムの縦横のサイズとフォントや大きさを統一して、同じような意味の文章を同じように並べていきますと、その繰り返しが全体の空間の幅と連動しあって1つのリズムを作ります。
段落やコラムや図版の間の余白は、紙面上で、見る人の視線を誘導するときの方向を決めます。また、その隙間の幅にもムードが宿ります。
段落が固まり、紙面を覆うたくさんの文字の集まりはぱっと見ると、紙面全体の周りの余白との対比で、地紋(この地紋みたいな表面の柄のことを専門用語で「テクスチャ」といいます)が塗り込められた、ひとかたまりの領域に見えますね。
印刷物のページもののレイアウトの現場では、大きな文のはいっている箱を「版面(はんづら)」、それを読みやすく分けたりグループ化したりするルールを「段組み」と呼んでいます。
11-06/グリッドデザイン|ダイナミックに視覚を誘導
図版も文字の集合であるコラムと同等の扱いをするところから出発します。
文字や図版と余白との位置関係を操作すると、各アイテムを視覚的につなげたり分離したりすることが可能です。
紙面スペースをうまく小区画に分離して構成すると、見ている人の視線をドラマティックに動かすことができます。
①要素と要素の間隔が規則的で変化のない構図は表面テクスチャを持つだけの静止した領域になります。
②行間を広げたり、文字の線幅を太くしたりして変化を作ると、均一なテクスチャーの中に強調箇所を作ることができます。
人は必ず、強調されている部分を何らかの意味で重要だと認識します。
重要度の高いものが突出すると、紙面上のエレメンツの中に序列や階層ができます。(金持ちが大きな家を建てたりするようなものです。)
③この「重要度が高いものは目立つ、他は並」というルールを繰り返し、連続的させるとリズムが生まれます。
④各パーツの間にも、新しい関係を与えることができます。
各段落ごとに視覚的な強調の度合いをつけることは、読ませる、という行為にリズムを与えます。意味をわかりやすくする助けにもなります。
11-08/グリッドデザイン|手順まとめ
■第一段階|内容の分類と格付け
まず最初に、コンテンツの持つ特徴とプロダクション上の重要度を評価します。
グリッドはいったん完成するとあとから変更が効きません。
コンテンツの特性、情報がどれくらい多彩か?画像の質や数はどの程度であるか?などを計算に入れてグリッドを組み立てます。
コンテンツをグリッドに収めるときによく起きるトラブルの一つに、「入り切らない」問題があります。桁外れに長い行(人や商品、ブランドの名前とどに多い)やトリミングが必要な画像、区画内にうまく収まらないコンテンツ(どうしょーもなく長いインタビュー)など、です。これらをどう処理するか?
残酷にクールに、余分な物を切り捨てることもありますし、出っ張ったところのみに特別ルール(フォントの大きさやコラムの大きさを変えるなど)を設けることもあります。
でも、こういうことにならないように、米澤は、下の二つを心得として実しています。
①コンテンツを区分ける際になるべく同じ分量になるようにする。
足りないときはコンテンツを増やしたり、他の項目に吸収合併。
多いときには削ったり、ページやコラムを新たに増設。
会社やグループの班分けやキャスティングと同じですな。
②多いものから決める。長いところから仕事を始める。
大は小を兼ねる、です。
大きいものが入る場所には、小さい物も納まります。
小さいところから始めると、大きいものが入らない!とあせることが少なくなります。荷物を車に積めたり、スーツケースのパッキングなんかと同じ理屈です。
コラムのデザインは、当然、「いちばんでかく見せたい図版→いちばん分量の多い本文→いちばん強い見出し→キャプションなど極小の文字→真ん中の見出し」という順で決めます。
■第二段階
グリッドが規定する補助線にしたがって、コンテンツを実際にレイアウトします。ですがちょこっと注意点があります。
グリッドは精密な基準ではありますが、そこに配置する要素を絶対服従させるものでありません。
グリッドの役割はデザイン全体の勢いを損なうことなく、「紙面に統一感を与えること」です。それをお忘れなく。
ですので、臨機応変でグリッドに手を加えながら進みます。
また、あまりたくさんグリッドのバリエーションをあまりに増やすのも、よろしくないです。
たくさんのグリッドを作るのは、お台所にあんまりにもまちまちなサイズの保存容器が増えすぎて、しまいにくくなるのと似てます。
統一感が損なわれ、管理が大変になり、元も子もなくなりますので、兼用できるものはなるべく使い回しをしましょう。
11-07/グリッドデザイン|デザイナーが神
デザイナーは文字のサイズや線幅、位置、間隔を自由に決めます。そのとき、あくまで目的は、「たくさんの情報を序列に従って読みやすく並べ、伝達するため」。
かっこいいイメージを作るためでも、しゃれたデザインを作るためでもなく、「書いてあることをスムーズに読ませること」がいちばん大切です。その範囲であれば、あとは自由にしていいのです。
■グリッドの基本技はライン揃え
各種エレメントを紙面に配置するとき、それらの位置関係を決定する、一揃の補助線のことを「グリッド」と呼んでいます。
■キーワードは「バランス」と「リズム」
どんなに複雑なものでも、同じ基本パーツを組み合わせた構造になっています。
個々のパーツはそれぞれの役割を背負っています。
そのコンテンツが持つメッセージをどういう速さで、どういうイメージで、どういう解釈させるか?
デザインの時ばかりは、デザイナーが神です。デザイナーの裁量で、必要によって内容が繋ぎ合わせたり、足されたり、割愛されたりもします。