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電子申告を体験してみた 1 住基カードへの道

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保温性が抜群でしかも軽い、かさばらない、漏れない。Sサイズのコーヒー1杯分の容量。熱いお茶をつめて出かけるときはいつも持ち歩いている。
今年、会計ソフト「ブルーリターン」を購入したときに、e-taxのチラシがパッケージに添付されていた。
そこには、
「ネットでカンタン♪申し込み!
 e-taxを利用して所得税の申告をすると
1. 最高5000円の税額控除を受けることができます。
2. 添付書類の提出または提示を省略できます。
3. 還付金を早く受け取ることができます(3週間程度に短縮)。」
との文面が、イラストと共に書かれていた。いっかにも簡単そう。よねにもできそうな口調である。

 e-taxを利用する前に準備することがあるという。
1. 電子証明書の取得
2. 開始届出書の送信
3. e-taxの初期登録
なんか、面倒くさそうだったが、なにごとも経験である。

 チラシでは手順は3項目だけど、国税庁のホームページをちゃんと読み込んでみたら、実は1番の「電子証明書の取得」には、厳密にいうと3つの仕事が含まれていたのであった。
1. 住基カードの取得
2. 電子証明書の取得
3. ICカードリーダの購入&ドライバのインストール
 げげっ。「カードリーダーは2000円から4000円」? なんだとー?。買いたくない。
 ここで、青色申告に問い合わせる。
「青色申告会の電子申告コーナーにお越しいただければ、カードリーダーが備え付けてありますので購入は不要です」
だって。
 青色申告会館まで出かけたら「家でできる」というメリットはゼロじゃん。へっ? あんた、それでも電子申告かい?
 確定申告の全体の手順さえおぼつかないよねである。どこが電子で、なにが普通の申告と違うのかさえもまだわからない。いっぺん、体験してみないかぎり、謎は永遠に解けないだろう。

 注意書きをもっとよく読むと、
「住基カードの取得は市町村窓口で申し込み、発行料は500円程度」
となっている。なにー?手数料がかかるのか? それも事前に役所に行かなきゃなんないのかいっ?
 くじけそうになるが、
「なにごともけいけん、とにかくやってみよう」
と言い聞かせて、よせばいいのに強風の中、マスクをかけて家から徒歩10分の区役所出張所に出かける。
 出張所に着くと、窓口の男が
「住基カードはここでは発行できません。区役所まで行ってください」
だって。おいおい、住基カードってなにさっ。出張所では発行できないほど、恐れおおいものなのかっ? 区役所まで歩くと4〜50分はかかる。不本意だがモノレールで行くことにする。(駅までと待ち時間を合わせておよそ30分。乗車料金210円)
 区役所はわりとにぎわっていた。
「住基カード取得の方はこちらに名前をお書きください」
という手書きの張り紙の下の名簿に名前を書き込む。直前の人までチェックが入っている。そんなに待たなくてもよさそうである。
 と思ったのは早合点であった。名前が呼ばれ、商店主っぽいおじさんがカウンターにすわった。対応している役場のおにいさんは、席を立つとどこかへ消え、戻ってくるまでおじさんはしばらく待たされている。
 職員が再登場するまでの間、よねは柱に貼られたポスターで、「住基カード」ってものがどんなものなのかをたっぷり学習する。市が発行するIDカードである。運転免許も保険証もない人が、身分を証明するためのカードである。写真入りと写真なしの2種類から選べる。「電子署名」は、きっと申告書に押す「印鑑」の役割を果たすためのものなんだろうと察した。暗証番号で本人との照合をするらしい。
 戻ってきた市役所員の手にはひらひらと何枚もの書類がはためいている。げげっ。「住基カードを作ってもらう」とは、そんなにもたいへんな儀式なのか。
 またまた、「もうやめよう」と思うが、
「ええい、なにごともけいけん!」
と言い聞かせる。

 市役所の人は、カードを機械に差し込んだ。ボタンを渡されたおじさんはなにやら入力する。いったん席を立つと、別のブースまで案内され、そこのモニターでも何かを打ち込む。おじさんが終わり、やっとよねの名前が呼ばれる。
 申し込み書を渡すと、住基カードの発行料が500円と、電子署名の発行代が500円だと知らされる。
 もうほんとうにこのまま家に帰ろうかと考えたが、
「ここまできたんだから。なにごともけいけん」
と思いとどまって料金を支払う。
もう後戻りはできない。意地でも電子申告してやる。

 職員が席を立ち、よねは先ほどのおじさんと同じように、席に取り残される。
 お兄さんが集めてきた書類は住基カードの領収書と電子証明書の領収書と、説明のパンフレット、カードリーダーを電気店で各自購入する際のおすすめ機種とメーカーと電気店のリスト。それと、なんと、
「住基カードにはお名前の1文字が違う字体で記録されています」
の証明書であった。
 すみませんが住基カードさんは「米澤」の「澤」を持ってないので、あなたの名前は「米沢」になってますよ、だって。澤くらい持ってないの? 仮にもあんた、市役所の証明書でしょ。いつ、誰がつくったシステムだいっ!
 係のお兄さんが悪い訳ではないが、あんまりのぎくしゃくぶりに、
「チラシには簡単って書いてあったからやってみたけど、わざわざ市役所来なくちゃなんないし、お金はかかるし、時間はかかるし、字は違うし、ちっとも親切じゃないですよね。市役所の方が悪いわけじゃないけど、簡単って書くのは間違いじゃない?」
とよねが言うと、お兄さんのかわりに横にいた中年の職員が
「そうですよねえ。ほんとはこれも県の仕事なんですけどね。市が動くことになっているんです」
とコメントした(ほんの少しうれしそうに)。
区役所は区役所で愚痴があるらしい。

気を取り直して
「申告用のお客さんは1日に何人くらい来られるんですか?」
と聞いてみたら、
「そうですね〜。今日はまだ少ない方で10人くらいです。」
だって。ちなみに3月2日までの最高は18人だったそうだ。(数えられるってことは、きっとこのお兄さんがこの期間、ずっとここの担当を守っているってことか。一人当たり30分として×18人およそ9時間。)
 区役所に着いてから住基カードと電子署名を無事取得して脱出するまでに、きっかり1時間かかったぞ。(まだ続く)