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ムーミン谷の彗星
そっかー。彼らは、はけんしゃいん、なのかー。はたらくキャラクター、なんかかっこいいな。「ともだちのしるし」と言って配っていた。子どもしかもらえない。大切そうにしまおうとしていたのを、となりの子どもからお借りした。子どもの間で名刺交換、はやるかも。
「あれがみな、きみのものなの。」
と、スニフは小声で言いました。
スナフキンは、平気な顔で、
「ぼくが、ここに住んでいるうちはね。じぶんで、きれいだと思うものは、なんでもぼくのものさ。その気になれば、世界中でも」
「あれをいくつかもらっていい? 帆前船でもスケートでも買えるもの。」
スニフがわくわくしながらききました。
「すきなだけ、とれよ。」
と答えてスナフキンはわらいました。……スニフはふうと息をついてから、ふるえる手でガーネットをあつめだしました。……(下村隆一訳 講談社青い鳥文庫「ムーミン谷の彗星」から)
きのう、おとといと、ちょっと気が重くなる案件が続き、すこーし気分が沈んでいたため、出がけに童話をバックに放り込んで家を出た。昔、読んでるはずなんだけど、細部を忘れているので、初めて読むみたいな気持ちで向かう。
彗星っていう、重苦しい現実がムーミントロールたちの毎日に張り付く。日に日に大きくなる夜空のルビー。風景が刻々と変化するのは、まるで現在の私たちの世界の温暖化と同じ。干上がった海を竹馬で渡るシーンは恐怖。
パパから言い渡された課題をつらぬく冒険に出たムーミントロールとスニフは、旅が進むほどに、自分たちが立ち向かっている彗星の本当の恐ろしさを知っていく。旅自体も子どもにはたいへん過酷な道のりで、難関が同時に二人におそいかかる。「ムーミンって楽しくない、ちょっと怖い話だわ」という印象は、この第2巻の暗さのせいかもしれない。
でもね、ちっちゃな生き物たちは、大切な仲間と巡り会う。たいへんなときでも、いつものどおりの口げんかをし、踊りたくなったらダンスをする。大切な発見をいくつもする。自分ちのベランダのすてきさ、とかね。旅、というか、生きていくことの意味が隠されている。すてきな話だった。
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