手製本を教えてみた
デザインを教えている専門学校の一年生に、「マイバイブル」という16ページものの本を作らせた。InDesignというレイアウトソフトの教材。100%よねオリジナルの教材だ。
「マイバイブル」の内容は、わたしが日々心に繰り返している、好きな言葉を16ページにまとめた本。宮沢賢治の「雨にも負けず」なんかも収録されている。詩集のようなレイアウトにしたのを生徒にサンプルで配布して、まずはそのとおりに作らせた後、
「これは先生のマイバイブルだから、みんなは自分の好きなことばに変えて、一冊提出。イラストを加えたり、レイアウトや判型を変えたりは自由」と言って、レイアウトもデザインも生徒に任せた。
InDesignというソフトは面付けができない。1ページから16ページまで、順に出力することしかできないので、「袋とじ」で本を作る方法を考えた。冬休みに入る前に、A4の紙に出力したのを二つ折りにしたのを平綴じにして、周りを裁ち、平背の本にして仕立てるところをお料理番組みたいに、教室でみんなの前でやって見せた。
冬休みが明けた。生徒たちは、好きな歌の歌詞なんかに、自分のイラストをつけたりして、けっこういい中身を作ってきている。手書きでまんがを書くがんこなアナログ派の子にも、Photoshopで読み込んで加工して、IllustratorかInDesignに貼付けてレイアウトする方法をしっかり教えてある。1年前とは見違えるようなものをみんな作っている。
アウトプットのちゃんとしたお手本があれば、きっとプロでない人でもいい本が作れる。そう確信した。
1月の授業は3回あったのだけど、生徒の作品の講評会と個別のだめだしのほかにもう一つ、「製本」をかませた。
いちばん早く完成に近づいていた子の本を取り上げて、みんなの目の前で豆本に仕立ててみせた。
こどもたちは、目の前で友だちの本がみるみるできて、びっくりしていた。それで、みんな火がついたみたいに「自分の一冊」を作りだした。自分の本を持ちたくて。
今年の終了制作は「自分の本」。わたしの授業はテストがないかわり、実物提出。来週が提出締め切り。すごく楽しみ。
たくさんの部数を出版する本もあるけど、個人が自分の本を持っていてもいいんじゃないか、という考えは変わらない。
「パブリッシュ」という言葉がインターネットでものすごく個人に近づいたように、いまや、印刷も本も個人レベルに降りてきている。個人のための製本もりっぱにカルチャーの仲間入りをする資格があるなきっと。
今日でこの学校の授業は終了。正直いってほっとしていたのだが、2月に製本のオプション授業を依頼された。