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見た方がいい橋口五葉
出発しんこーう。どこを旅している途中か、わかったあなたは偉い。加速のときとカーブ。あと、坂。うかつにもわくわくして、写真撮っちゃった。
今週から千葉市立美術館で橋口五葉の展覧会がはじまった。漱石の「我が輩は猫である」の装幀をした人であーる。大正時代に活躍したグラフィックデザイナーの先駆けで、あーる。
今月からお休みが週二日になったので、こうして美術展にもさくっと出かけられるようになった。朝、早めに家を出発してまた徒歩で美術館まで。散歩が最近のよねの唯一のスポーツであるから、運動も用事も楽しみもぜんぶ兼ねてる。
散歩はともかく、橋口五葉は、ものすごい見応えであった!グラフィックデザインを勉強している人は行った方がいい!千葉、都内からはちょっと遠いけどね。7月いっぱいまでやってます。
女の人が浴衣を羽織って、日本髪をほどいて櫛でとかしているシーンをとらえた、ものすごい浮世絵がこの美術館の所蔵品であるのだけど、以前、別の展覧会でここのボランティア解説の方に、その浮世絵の作者が「橋口五葉」であると教わった。五千円札の樋口一葉と名前そっくりさんなので一発で覚えた。五葉の浮世絵は大正時代に刷られたんだということだった。
黒髪の1本1本が木版のきりりとした線で描かれていて、緻密な線の流れとの対比で顔首胸の肌のなめらかさがものすごく強調されているうつくしい絵。初めてその浮世絵を見た時、一本の線ってなんていろんなことを物語るんだろうとしばらく動けなくなるほどじーんとした。今思うと、そうか。なんであんなに響いたのかわかった。おなじデザイン道のずっと先輩なのだ、五葉は。
このたびの美術展は鹿児島から東京美術学校に入学のために状況してきた五葉の画家としての出発から、40歳の早い死までの仕事ぶりを一同に集めた展覧会でした。スタートは日本画や洋画を学んだ美術学校の関係者、黒田清輝や藤島武二なんかと並んだ写真から。
画家としてもいけたのかもしれないけど、その後、五葉は本の装幀を業とするようになる。出版社のポスターや、絵はがきや挿絵なども手がける。原画やスケッチの保存状態の良さに仕事への誇りが伝わってくる。画家ではないけれど、絵画とおなじように、デザインの仕事もきちっと自分の作品として重ねていったのだなあと感じる。
「我が輩は猫である」の装幀の版の原画とラフスケッチはすばらしかった。うすい透き通ったハトロン紙みたいな紙に墨で描かれていた。それから方眼紙に下絵を鉛筆で書き込んだものも残されていた。ビアズリーやウィリアムモリスの装幀もお手本にみていたに違いない。
五葉がいかに印刷やインクの技術に精通し、製本の職人さんを自分のパートナーとして大切にして仕事をすすめていたことが、伝わってくる。
出版された本の実物も展示されていたが、こんなにいろんなエディションがあるのを知らなかった。装幀の魅力に後押しされて、大好評で出版を重ねていったのだなあとわかる。岩波書店の壷のマークも五葉作だって。あと、「五」という漢字と葉っぱを組み合わせた五葉のトレードマークもかわいい!
グラフィックデザイナーとして仕事が認められた30歳の夏に、五葉は約1ヶ月の九州へのご褒美旅行に出かけるのだけど、その旅でたくさんのスケッチを残している。この旅で五葉はライフワークになる「旅先の風景」と「おねいさんお風呂シーン」という浮世絵のテーマをつかまえる。そのスケッチもとてもいいんだ!
よねがいちばん気に入ったのは、山や空、温泉が吹き出て湯気がたちのぼった水辺の風景のスケッチ。それには空が描かれていて、そこを見ている瞬間の五葉の全開になった幸せ感がよねにも伝わって来て、脳の後ろにりんりんと、震えがきた。泣きそうになったよ。
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