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絵なんか描けなくたって絵が描ける

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きもちいい風が吹き渡っています。高原にいるみたい。けど、家じゅうのほこりも飛びまくっています。めだかの赤ちゃんが今朝、生まれた。透き通っているし小さすぎ。ここいら辺にいると思ってください。
 医者は医学部、看護士は看護学校を卒業しなくちゃなれない。国家が定めているから。でもグラフィックデザイナーとか、漫画家とか、アニメーターなんて職業には資格なんて必要ないのだ。学校を卒業したからって、確実に職にありつける保証はない。だから楽しい。そして厳しい。
 よねが大学4年だったときは、デザイナーも医者と同じように、職業に向けて専門の勉強を積むのがあたりまえだった。デザイナーだったらどこそこの美術大学とかデザインの専門学校卒業している、ってのが企業の募集の暗黙の条件、みたいな風潮だった。
 30年前、広告の仕事は手先が不器用な人にはむいていない仕事だった。印刷の版下を作ったり、写真を加工するのには細かい緻密な職人の技が必要だったから、限られた人だけのわりのいい職といえた。
 現時点2009年の7月、しっかりした技術を積んだ職人であれば、生涯心配なく食べていける仕事がずっとある時代か?というと謎だ。守って来た手技がこれからも家族全体を養っていける業か?うーん。悲しいけどNoだな。
 グラフィックデザイナーという職業を大学卒業と同時にゲットしてよねが社会を泳いだ30年で、世の中の水は劇的に変わった。

 最先端の技術の会社がアカデミックな手の技を持っている職人を要求しているってことはわかる。でもだからって、「早いうちからデッサンしておいたほうがいいよ」と、学生に勧める気にはなれない。
 デッサンが不必要だとは言わないけど、絵なんか描けなくたって、絵は描けるよ。矛盾しているようだけどこれは本当のことだ。
 大昔はピアノやチェンバロの名手が作曲家だった。でも現代にはピアノが弾けなくても、楽譜さえ読めなくてもきれいな曲が作ってる人はうようよいる。羽は生えていなくても空は飛べるし日本にいても世界を散歩できる。
 デジタルって、そもそもそういうものじゃないか。
 デッサンをもってこい、と募集要項に描かれているからデッサンを就職用に練習する。それって、ナンセンスな気がするんだけどなあ。
 募集要項にデッサン、と書かれているのは、ミスコンとかの応募要項に身長185cm以上、年齢20以下と書かれているのとまったく同じだと思う。
 
 そういう求人しか目に入らないとは、ちょっといけないな。デッサンに学生がコンプレックスを持っているとは。よね先生が悪かったよ。反省するよ。
 つべこべいわずに手を動かそう。デッサンじゃなくていいんだよ。自分がいちばん得意なことをしよう。身についたことに自信を持って。手が未来を教えてくれる。(続く)