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ぎりぎり選手権

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どの仕事もご縁で自分に回ってくるのだと思う。どの役にも役がぴったりあう、自分の旬がある。どんなにうれしい仕事にも必ず次の世代に譲る日が来るのだ。だから関わっているうちは、100%がんばろう。
 学校の仕事とデザインの仕事の山がこのところ同じ日に重なる。ありがたいことこの上なしなんだが、いっぱいいっぱいではらはらする日々が続いています。
 とくに月曜日。午前中にクライアントさんに入稿、というケースがとても多い。

 今週も、もう、だめかと思うくらいのぎりぎりぶりであった。
 朝4時。目覚まし時計だけでは足りなくて、携帯のアラームも総動員でやっとベッドから出る。アラームは3時55分に「ハイホー」、4時5分に「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」、4時10分に「森のくまさん」。電話は離れた机に置いてある。鳴っては起きあがって、ボタンを探って止めに行く。この動作を3回繰り返して、やっと動ける状態になる。
 すぐに着替えて仕事に取りかかるけど、ぜんぜんデザインはまとまらず、6時半を過ぎてあせり始める。
 7時頃からようやく方針が決まった。ダミーの写真を雑誌から探してスキャナーで取り込み、7時半に朝ご飯を支度し始め、8時に食べ終わり、家族にコーヒーを出し、9時ごろ写真を貼り、文字原稿を流し、微調整が済んだのは10時半過ぎであった。
 作ったデザインを送信するため、データを送信できるファイルに作り直す(書き出し、という)のだが、大きなデータなので、メールに添付するのが不可能ということがわかった。
 ホームページ用にレンタルしているサーバーにアップロードして、お客さんにはそのアドレスをクリックしてもらう仕掛けを作る。アップロードには少し時間がかかる。パソコンの画面がアップロードのパーセントを示す画面で止まっている間に顔を再度洗い、歯を磨く。
 メールを送ろうと慌てて操作したところ、うっかり、別のファイルに触ってしまい、開いてしまった。ファイルが開く間、パソコンは一瞬、仕事が進められない状態になる。
 口では叫びながら目は画面を見つめ足はじたばたしている。開いたファイルはたまたま、一緒にデザインをしているアートディレクターの他のページのデザインデータであった。その瞬間に開くべきものではなかったのだが、そのデザインにはよねが朝から迷っていたことのアンサーが描いてあったのだ! 
 一目見て、そうか!そうすればよかったのだ!ということに気がついたからには、直さずにおられようか。いったんアップロードしたデータの作り直しをその時点から瞬時に決め、開始した。
 InDesignを再び立ち上げ、元のファイルを開き、速攻で修正をする。写真の大きさを2カ所変えた。そしたらいくつかの文字のバランスも変えなくちゃならなくなった。不思議なことに、こういうときって、実力の3倍の速度で脳が回る。手がどう動けばいいのかを知っている。
 受け持つ授業は午後1時から。12時45分に秋葉原にいるには、11時40分のモノレールがデッドラインだ。最おそでも11時35分には家を出なくては。
 メールの送信ボタンを押し、学校に出かける準備を開始する。授業の準備と食糧と教材のデータをリュックに詰め、服を外出用に着替える。こういうとき、あまり服のバリエーションを持たない、というのはとても良い。おしろいをはたいている最中に時計を見たら、もう11時20分を回っていた。
 携帯と定期と財布をバッグに押し込み、リュックを背負い、家から走ってモノレールの駅まで行き、さすがにものすごい長い階段は最後まで駆け上がることはできなかったが、とにかく全力疾走。JRの駅での乗り換えでも走る。全日本ぎりぎり選手権って感じだ。
 12時01分千葉発の総武線快速に空き席を見つけ、そこに座った瞬間に、ほっとして眠くなる(もちろんすぐに暴睡。錦糸町まで30分の仮眠)。
 時間が足りなくなるのは、自分の実力を過大評価しているから。ぜったいに良くない。でも、「追い込まれ」を経ないと、デザインが磨かれない気がするのには困ったものだ。