河野鷹思のグラフィックデザイン
昨日は東京に出た用事のあと、国立近代美術館で催されている展覧会「河野鷹思のグラフィックデザイン>」に寄った。
河野鷹思というのは昭和の始め、それと戦後の日本のグラフィック部門を支えた重鎮の一人。今のみずほ銀行が第一勧業銀行だったころのハートのマークをデザインした人だ。
もう、ひさびさに泣いたね。そのかわいさに。色面に込められた愛情というか、ほほえみというか、人を楽しませてやろうといろいろな仕掛けが仕組まれている、おもしろ心あふれる印刷物に!すっごく良かった!恥ずかしながら、河野鷹思さんの作品をこうして、作者を意識してちゃんと見たのは初めてだったので感動ひとしお。日本人で良かったなあ。
戦前の雑誌の表紙や映画、演劇のポスターには今の印刷物にはない、のんびりしたウィットが満載。ケースを壊して盗みたいくらい好きな物がいっぱいあった。本のカバーなんかも手がけているのだけど、「ああ、こういうのもありね」というふうに、手作り本やホームページの仕事の参考にすぐなるアイデアもしっかり心のカメラで撮った。ぱちり。
よねが受け止めたのは、色とか、顔とか、面積とか字の形とかすぐに仕事にいかせる小手先のヒントだけじゃない。この展覧会では、なんだかもっと深くて正しくて尊いものというか大切なものを、いただいた。
「これでいーのだ!」を聞いたのだ!
知らない道を不安がりながら進んでいるときに、海、とか、川とか山とか大きな目印の建物が視界に入って、「ああ、この方角で違っていなかったんだ!」と確信する瞬間って、あるじゃない。そういった感じとでもいおうか。
よねのデザインの仕事の向いている方角がこっちであってたんだ。いままでいろいろあったけど、今はこの方角に進むのみ!そういう自信。もっと大げさに言うと、現在毎日送っている暮らしじたいの行方についても。「こんなあたしで、いったいいーのだろうか?」と、不安に思う場面がななかったわけでもないのだけど、その不安を打ち消す天の声を聞く(大げさ!)。
近美に着いたのが4時25分。閉館35分前というタイトな持ち時間だったけど、集中してかぶりつきでがーっと回る35分の間に、目から入った河野鷹思細胞が体内を駆けめぐって足の裏に到達し地面につながって、なんかよねのふにゃふにゃしていた足元がみるみるぴしーっと固まってまわりに広がって行く。そんな感覚を味わった。あんまり時間ないのでやめようかとも思ったのだが、行ってよかったなあ。
この展覧会は2月いっぱい。あと数日しか会期がないんだけど、ものを作る仕事してる読者にはぜひみていただきたい!
超おすすめ!